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  • 執筆者の写真東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

夕陽の赤みが部屋に欲しい!

更新日:2022年12月14日


癒しの光は立ち止まる光


夕陽の話題


前回、私の記憶に残る光の光景の一つとして夕陽の話題をいたしましたが、夕陽に惹かれその色味を求める人は思いのほか多いようだということに気が付きました。例えば、私がレクチャーをしている東京理科大学の講座で「元気が出る照明」をテーマに学生に問うたところ、「自分は夕陽に明日の元気をもらいます」という生徒が複数いたのです。通常、夕陽は癒しの光の要素としてとらえられますが、学生たちは夕陽のような赤みを帯びた光に癒されるだけではなく、元気をもらう・・・と理論を展開します。

 

なぜ夕陽が良かったのか?


また、太陽が地平線に落ちて行く時間帯に夕陽を浴びながら過ごした日はよく眠れる気がするという方もいました。しかし、その後に室内に入って明るい照明を浴びてしまうと、せっかく夕陽で得た睡眠導入状態がリセットされてしまう気がしたとのことで、最近は室内の電気照明を使わずキャンドルを使って過ごしていると言うのです。また、最初はLEDキャンドルを使ってみたが、その効果は本当のキャンドルにはかなわないと。


LEDキャンドルと本当のキャンドルの光を比べたら一目瞭然、LEDから発せられる光のスペクトルには赤い波長が弱いものが多いようです。一方キャンドルによる炎の光は部屋に夕陽と同じように温かさを感じるほど赤みの強い光が広がります。私たちにはこの赤の波長というものが必要で、このスペクトルが私たちの心をあたため、癒し、明日への元気をもたらしてくれるのでしょう!


 

夕陽を再現したプロジェクト


この話から思い出したのが、ランドスケープデザイナーの団塚栄喜さんとのプロジェクトです。それは二十四節気でつくる庭というテーマで24の小さな庭がデザインされていたのですが、その中で秋分をテーマにした庭がありました。その庭は広い敷地の西側にある小さなスペースで、モミジが1本植えられ、夕陽を見る縁台という趣向でした。夜になっても夕陽のような光でモミジを照らせないか?という要望だったのです。


その時に思いついたのが、白熱電球をグーっと調光で絞って赤みを出すことでした。そしてこれを安価に具現化するために、日本よりも電圧の高いヨーロッパ仕様のバーハロゲンというランプを使って調光する方法をとりました。ヨーロッパの230ボルトで点灯するランプを日本の100ボルトの電圧で使えば、それだけで40%くらいに調光されるという理屈を考えたのです。


実際、試してみると夕陽にフワーっと西日に照らされたようにモミジが浮かび上がり、しばらくそこに佇み、時間を過ごしたくなる場所になったのです。

 

癒し照明のポテンシャル


昨年からのコロナパンデミックをきっかけにオンラインを中心としたワークスタイルが主流となりましたが、ともすると前よりもさらにパソコンやスマートフォンに触れている時間が増え、ズーム疲れ、バーチャル疲れなんていう表現も耳にするようになりました。この現象を照明的に整理すると、リモートワークによってPCの画面に向かう時間が増えたことで、モニターから発せられる青色LED由来の光をたくさん浴びて私たちの視神経が常に覚醒させられているのです。


仕事場が家になり、会社に出社する必要がなくなった代わりに、LEDから発せられる「働け照明」にムチ打たれているような状況なのです!これはどうしたものでしょうか?

これまで以上に、癒しの照明は、人が立ち止まり、明日への力を蓄えるための大切な光だと言えるわけです。


若者は、時代を敏感に感じているのが面白いですねー!


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