IoT時代の照明はどう点ける?
スマートスピーカーの話題
いま、AI(人工知能)を搭載したスピーカー、スマートスピーカーなるものが全世界で人気が出てきています。テレビCMで見たことがあるかもしれませんが、日本ではAmazonのAmazon Echo、GoogleのGoogle Home、それからLineからもClova Waveという商品が発売されています。
さて、このスマートスピーカーは何をするか?なのですが・・・、インターネット検索、スマートホーム(照明や家電製品)に対する命令を中継したりします。最近ちょっと面白い話を耳にしました。Google Homeの場合、まず最初に「オーケー、グーグル」と呼びかけるのですが、シャイな日本人にとって、オーケー、グーグルと声を発するのはよほどテンションが高くないと厳しいという意見があるそうです。
スマートスピーカーに対する音声デザイン
こういったコンピューターと人間の声でのやり取りは、今までにはなかった新たな分野で、その研究が急ピッチで進められています。これまで、コンピューターと言えば、キーボードで入力した文字や数字が命令でした。それが、スマートフォンやタブレットPCが出てくると、声でも入力が出来るようになりましたが、上手く音声が判断されないで違う言葉になっていたりしていました。
しかし、最近急激に進化を遂げて、スマートスピーカーという音声のみに対応するアイテムが登場してきています。このAIスピーカーに向って話しかけると、その声を理解してそこからつながっている様々な家電製品・照明をコントロールすることができるというわけです。そこで、どんな言葉をもって照明を操作したいか?を考えてみることにしました。
照明をどう表現する?
さて、ここで閑話休題、ちょっと面白い話を思い出しました。
それは以前、東京都内で照明デザイナーの集まりがあった時のこと、会議室でプロジェクターを使っていた大御所の照明デザイナーの方が、プロジェクターがよく見えないから「電気消して!」と言ったのです。プロの照明デザイナーでさえ、明かりのことを“電気”とつい言ってしまい、ちょっと会場では笑いが起きました。
確かに、日本では最初の家家に電気が曳かれた当時は、電気=電灯だったのです。家電製品が登場したのはそのずーっと後(50年後)のことなのです。そんなこともあって、私も子供のころには、照明=電気と思っていました。そんな事情があるからなのでしょう・・・IoT時代になった今でもスマートスピーカーに「電気点けて、電気消して」と言うのでしょうが、もう少し素敵な言葉をかけられないだろうか思います。
例えば、「あかり灯(とも)して」なんていうのはキャンドルに火を入れるようなニュアンスで素敵じゃないでしょうか。それから、薪の感覚で「あかり焚いて」というのも温かみを感じます。
細かな設定やシーン分けも
AIが搭載され、また照明光源そのものも進化しているのですから、ただ点けたり消したりだけではなく、細かな操作も出来るようになったのが現代の照明です。 ならば、「明かり100!」、明かり50、30、1、0.1・・・なんて、数値を言えば調光もしてくれるでしょう。100とか50とか数字を言うのが風流さにかけるというのであれば、「あかり大盛!」とか「あかり少な目」などという表現がいいかもしれません。もしくはもっと洒落て「あかり大さじ一杯」とか「小さじで少々」・・・。
それから、手元に明るさが欲しい時は、「明かりここに頂戴」というのも悪くはありません。私のようなワイン好きとしては、「開けて」とか「オープン」と言ってコルク栓を抜いて香りが立ち上がるイメージは、そう考えるだけでも楽しくなってきます。
「開けて」の表現から更なる発展をさせれば、「開けて」→「明けて」のほうにすればゆっくり夜が明けるような変化時間を含んだ場面転換の指令となることもできそうです。 おっと、、何だかのってまいりました。もう少し続けましょう! ・・・「ミュージックスタート!」という掛け声にになぞらえて、「明かりスタート!」これは時間の流れを感じさせる言葉なので、例えばディナー用に設定した2時間くらいで変化する光のシーンを客人に悟られないように小声で呼び出すのに使うイメージです。 こんな風にスマートスピーカーを前に、照明を呼び出す言葉を考えてみたら、そこには、これからの照明と私たちの暮らしとの新しい関係が見え隠れしてきます。それぞれの家庭や友達ネットワークの中で、あるいはパーソナルな密かな楽しみとして、ただ、電気点けて消してではなく、ちょっと洒落た言葉に変えたり、その表現が開発されていくと明かりの文化がさらなる発展を遂げるのではないかとワクワクしています。