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執筆者の写真東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

照明を偏愛する照明が大好きなヒトビト


床に置かれた照明器具SHOJIと東海林弘靖(右)とダヴィデ・グロッピ(左)
photo by LIGHTDESIGN INC.

こだわりはつながりを生む


イタリアにShojiあり!


今年の秋は6年ぶりにイタリアを旅する機会がありました。私がイタリアを旅する時に真っ先に頭に浮かぶのは、各地に必ずあるカンティーナ(ワイン醸造所)を訪ね、ワインをテイスティングして、それがどんな思いで作られたのかを醸造家にお聞きする楽しみです。


しかし、ワインだけではなくイタリア各地で製造する大変マニアックで楽しい照明メーカーやデザイン会社を訪ねて、「いかに照明が好きなのか?」といった照明愛の言葉を交わすことは、ワインと同じくらい、いやそれ以上に大きな楽しみにしているのです。


今回は知人のイタリア人がたいへん素敵に旅をアレンジしてくれたのですが、その途中に私が”Shoji“という照明器具に遭遇するというハプニングが仕込まれておりました。

 

Shojiとのご対面


旅の途中で立ち寄ったのはイタリアの北部エミリア・ロマーニャ州にあるPiacenza(ピアチェンツァ)という人口10万人ほどの地方都市でした。伺った照明会社はDAVIDE GROPPI(ダヴィデ・グロッピ)という会社、これは社長兼デザイナーの名前でもあります。


このブランドは最近世界各地のインテリア雑誌などでよく目にしていたので、とても気になっていたのですが、なかなか仕事でスペックするには至っていませんでした。そして、この照明会社にShojiという名の照明器具があるなんてことも知りませんでした。

 

対してダヴィデさんの方はと言うと、同じくShojiという照明デザイナーが日本にいるということは知らず、日本からShojiがやって来る!というので、そわそわして待っていたようです。そして、秋の雨上がりの午後に、いよいよご対面となったわけです。

 

はじめまして、僕が日本からやってきたShojiです!

私はダビデです。実はここにもShojiがいるんだよ!

…なんて、やり取りが交わされたのでした。

 

照明大好きオヤジの感性のキャッチボール


さて、ダヴィデさんがShojiと名付けた照明器具というのは、日本の障子にインスパイアされて和紙の行灯のような柔らかな光を放つフロアスタンドだったのです。和室の畳の上に置く行燈とは異なって、イタリアの大理石の床に置くことをイメージしたのでしょう、比較的大ぶりな存在感なのが実に新鮮です。また和紙のようなテクスチュアをイタリア人の感性で樹脂で再現するなど、秀逸なクリエーションに思わず笑みがこぼれてしまうほどでした。 

 

私が興奮してShojiの隣に座って写真を撮っていたら、ダヴィデさんも嬉しくなって写真に入ってきてしまった!(上の写真です。)

 

そんな出会いからほどなく、工場の見学をして一角にあるショールームを歩いていた時のこと、何やらワクワクする小さな照明器具を発見いたしました。それは調理に使用するオタマをひっくり返して卓上スタンドにした、「POST PRANDIUM」というポータブルライトでした。


DAVIDE GROPPIの卓上スタンド「POST PRANDIUM」
photo by LIGHTDESIGN INC.

その展示コーナーにはお皿に見立てたプレートと、その両脇にはナイフとフォークが…まるでデリシャスライティングじゃないか!


書籍「デリシャスライティング」の表紙
著書「デリシャスライティング」(TOTO出版)

私がデリシャスライティングという料理本をモチーフにした照明ワザの本を書いた話をすると、「やっぱりな~!」とダヴィデさん、こんな風にどんどん感性が火花を散らしてゆくのです!

 

熱い想いは刺激となり…


照明が楽しくてしょうがない! 照明の仕事は遊ぶこと以上にたのしいんだよね! スケッチをしたり、照明器具のモックアップを作ったり、その照明器具の名前を考えたり、毎日がワクワクする… 世界にはそんな熱い思いを抱いている人たちがいるのです。


同じような思いを持っている人との会話には、大きな喜びとこれまでやってきたことが間違っていなかったという不思議な達成感のようなものを感じます。そして、さらに照明への偏愛が高まってゆくことを感じるのです。



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