照明デザイナーがAIを使うとき…
- 東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

- 4 時間前
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光をどう語り、どう問うか?
昨今のAI事情
気が付けば、AIという言葉が日常の会話の中に登場してきました。そして、その性能がここ半年くらいで急速に進化しています。いつの間にか、インターネット検索にAI機能が登場して、AIがユーザーの質問の意図や文脈を解析し、勝手に関連する複数のWebサイトを横断して、要約した答えを口語調で表示するようになりました。それだけではなく、そこから「あなたはどう深掘りしたいのですか?」と対話を促されます。どうやら今のAIは検索者からの「問い」がキーポイントとなるらしいのです。
さて、このAIとやらは、生活の一部に浸透してきているわけですが、私たち照明デザイナーは、どのように付き合ってゆくのが面白い未来につながるのでしょうか?
AIサービスも色々
日本でもよく耳にしてきたのはChatGPTというAIサービスですが、それ以外にも様々な会社がそれぞれの個性あるAIサービスを展開しています。例えば、Googleが手掛けるGeminiというAIは検索がお家芸であるゆえに、答えにリアルタイムの検索結果が反映されているという強みがあります。また、Claud AIは先述の2つと同様に対話式AIに加えて、長文読解や高度なプログラミングを作ることができる・・・のだそうです。
人間側が異なるAIに同じ問いを立てても、そこから始まる対話の進み方によって、結果の答えに大きな違いが出てきてしまうことになります。そこで、AIを使いこなす賢者の間では、その偏りをなくすために、複数のAIを同時に走らせるなどの方法が使われている、そんな時代となっているそうです。
対話する前の下準備
さて、この対話式AIなのですが、その対話に対してはどうやらコツのようなものがあるというのです。コツ─つまりユーザーのリテラシーというのでしょうが・・・、その人のリテラシーが高い場合には、AIの出した答えが見当違いの内容になってしまったと時の間違いも指摘できますが、そうではない場合はどうしたら良いのでしょうか?
そのような状況を減らすためには、事前に「プロンプト(前提条件などの提示文)」をAIに伝えておくという方法があるそうです。
「照明デザインは人生の時間を有意義なものにするためにあることを前提としてください」とか、「照明は明るさをいかに得るかの工夫ではなくて、光と影が織りなす時間をつくることが最も重要なことであるという思想を前提としてください」などといったプロンプトをどんどん学習させ、積み上げて対話の前提条件を構築しておくことが求められます。
・・・これって、つまり優秀なアシスタントを育てている途中段階ともいえますね!
そして、ついに育った優秀なアシスタントと照明デザイナーはどのように付き合っていくのか? そんな折、二つのことを思い出しました。
ひとつ目は、ザハ・ハディドの事務所出身のティム・フー氏という建築家が、AIとのやりとりにおいて建築家は、「キュレーター」であると語っていたことです。彼はスロベニアでのプロジェクトで地元の伝統を自らの建築デザインに取り込むために、AIにスロベニアの伝統的な建築様式を学ばせて、その特徴などを分析し、アイディアを選別、そして組み立ててゆくそうです。建築家は優れた「キュレーター」たれ!というのです。
もうひとつは、私の見てきたたくさんの建築家の中でも、伊東豊雄さん、妹島和世さん、藤本壮介さんたちの仕事の進め方は、ひたすら自ら図面を引くのではなく、若く優秀な所員たちと自由でとらわれないアイディアの発出を行い、その中から可能性の芽を見つけ出し、さらに大胆に、強いものへと育てていくよう方向付けをするのです。そういう意味では、彼らの行為もまたキュレーションという要素ととらえることができるのかもしれません。
"AIと共に仕事を進める"とは?

では、私たち照明デザイナーは、優秀なアシスタントとしてのAIとどのように向き合って、面白い未来のための照明デザインを進めてゆくのでしょうか?
①AIに事前にしっかりとした前提条件を伝えることができるようデザイン哲学をもつこと
②人間は優秀なキュレーターとなるべくあらゆる知見を高めていくこと
③インターネットに載っていない(AIが拾いきれない)リアルな経験を重ねること
これら3つの要素の重要度が大いに高まることは間違いないでしょう。
私がかつてサハラ砂漠で体感した満月の明るさ、厳寒のアラスカで知覚した温泉とオーロラ観測、あるいは熱帯のパプアニューギニアで体験したサンゴ礁の海に沈む夕陽のシーンなど・・・これらは単なる明るさ、色だけではなく、温度や湿度、匂い、波の音や鳥の声、その地にたどり着くまでの文化との出会いなど、記号的情報に置き換え難いものが統合されています。
そんな微細な情報も認識している私達の感覚は、優秀なアシスタントAIにどこまで伝えていくことができるのか、はたまたそこは分離されたままキュレーターとアシスタントとしての距離が続くのか・・・。
半年後、1年後、5年後の世界が楽しみですね!
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