不思議な空間の照明

最終更新: 2019年8月23日


複雑な建築はムズかしい?


話題の場所


ニューヨークのマンハッタンに出来たある建築が話題になっています。それは、ハドソンヤーズ(Hudson Yards)内にできたベッセル(Vessel)という少し風変わりな建造物です。これをデザインしたのはイギリスの“3次元デザイナー”と呼ばれているトーマス・ヘザウィックさんです。あらゆるアングルから印象的な写真が撮れることで一般の方(建築関係以外の方)からも、熱い注目を集めています。さらに、オープンに先駆けて話題になったのは、施設を運営する会社が、一般の人々がここで撮影した写真や動画、セルフィーまでも自社のライセンス物であるというルールを設けてしまったことだそうです。


これほど注目される建築について、光のソムリエとしては照明的展開に思いを馳せてみたいと思います。

今までになかったスタイルの建築


私もトーマス・ヘザウィックさんの建築はロンドンで見たことがあります。象が鼻を巻き取るように変化するブリッジや、病院のやわらかな凹凸が印象的なファサードなど、確かに今までの建築家とは違う感じ・・・、より自由で軽やかな思考を見せてくれます。

2000年代前半はそのイマジネーションを具現化することが難しく、小規模なオブジェのようなものしか作られてこなかったのですが、2000年を超えてから、コンピューターによる3D設計が可能になったおかげで、今までにないような建築物も世の中に登場するようになりました。


そのような建築で私が照明デザインで関わったものでは、ザハ・ハディドさんの数々の巨大なプロジェクトがあります。毎回プロジェクトを紹介されるたびに、ワクワクしながら、「さて照明はどうしようか・・・?」と思うものばかりですが、一方で建築の意図を丁寧に理解して、設計者の立場でどんな照明が必要か?と読み解いていくと案外すーっと照明デザインが浮かび上がってくることが多かったように思います。

照明は空間に寄り添う

Galaxy SOHO Photo by Toshio Kaneko

ところで、建築空間の作り方が3次元化したら、照明との関係はどう変化していくのでしょうか? 以前、「光と空間はマリアージュするもの」でお話したように、光は空間の魅力を引き立てる調味料のような存在ですから、どんなに個性的な素材であっても、それに寄り添いさらなる深みを生み出していくものなのです。


例えば、ザハ・ハディドさんのデザインはストリームと呼ばれる空間のうねりのような表現が3次元に展開しています。常に流れる世の中や空気、時間、人・・・そういったその場にある気の流れを表現しています。それを建築として具現化するとこうなる・・・といった感じに、頭ではなく感覚的に構築された空間のように感じました。一見すると“変わった形”なのかもしれませんが、そこには理詰めではない心地よさがあるのです。そういったデザインの意図を、私たち照明デザイナーは受け取る感性が求められていると思います。

形態デザインに変哲があろうが無かろうが、私たち照明デザイナーは、建築家がどこを考え抜いて、そこに至ったのかを探り、建築家の気持ちを感じて心地の良い光の空間をイメージしてゆくのです。


いよいよ来月、ザハ・ハディドさんと進めてきたプロジェクトが竣工するので、光のソムリエでも紹介したいと思います。

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