どう扱う? 照明以外の光
身の回りにあるライト
身の回りを見渡してみると、照明ではない光がずいぶんたくさんあることに気が付きます。たとえば、部屋の中には、家電製品に仕込まれた赤や緑のパイロットランプがついています。そして、それらは部屋の照明を消して人々が寝静まると、まるで「おもちゃのチャチャチャ」よろしく賑やかに煌めいてくるのです。
その中には、アップルのノートパソコンのようにスヤスヤとスリープしている気の利いた方々もいて、なんだか夜も多様な世界観を見ていることに気が付きました。これらの光たちのほとんどは、ある特定の目的があって光っているのです。そしてその目的というのが “フィードバック”です。
フィードバックとは?
例えば、上記のパソコンの写真を見ていただくと、3つのグリーンに光るライトが確認できます。ひとつは左端のUSB、その他の2つはキーボードのキーについています。ここでUSBが光る目的は、確かにUSBが接続され通電している状態を示すものです。キーボードのほうは、パソコンに慣れ親しんでいる方はすぐにお判りでしょう。手前の光っているキーはアルファベットを大文字にするときのCapsLockキーで、これが有効になっていることを示すためにグリーンのライトが光っているというわけです。
もし、これが光っていなかったら、どうでしょう? パソコンによっては、ディスプレイの右下の文字入力メニューにCapsLockになってることを示すアイコンが表示されている場合もありますが、何かの入力画面で文字を実際に打ってみて大文字が出てきてはじめて気づくなんて場合もあると思います。しかし、CapsLockキーについている小さなライトが光るというフィードバックがあることによって、そのON/OFFが直感的にわかるという仕組みになっているのです。
光の種類
さて、今回検討したい光はそのフィードバックとなる光です。先ほどのキーボードの例では、ライトは緑色に光っていたように、機械類のパイロットランプは緑、赤などが多く使われていますが、その使い分けは家電製品によって異なっているのだから戸惑うことがあります。
信号機のように緑=OK、赤=ダメ(問題がある、エラー)というのが一般的だと思っていたら、実は、逆のパターンもあります。照明のスイッチでは、赤=(問題なく)通電、となっている場合があったりするのです。この場合は、通電している=危ない=赤という考え方なのでしょう。私たちは何となく学習させられてしまったので、それらを使い分けることができるのですが、何か解せないものが残ります。
また、別の事例を考えてみましょう。今度は光色だけではなく、光り方に注目してみましょう。先ほどのスリープモードですが、アップルコンピュータの“スヤスヤ”は、なかなか素敵です。本当にスヤスヤ眠っているかのように感じます。計ってみると、人の通常の呼吸よりも少し長いことが分かります。このスヤスヤをデザインした人はなかなか優れたデザイナーだと感服いたします・・・。他のメーカーのPCもスリープした時に同様の光を発しますが、これほど気持ちの良いものをみたことはありません。スース―と寝ている呼吸のようなので、まさに“スリープ”の状態だということが使う人にとって直観的に伝わります。
このようにただ光るだけよりも、メッセージ性のある光り方によって、今後の身の回りのIT化はもっと便利にわかりやすくなるのではないかと思います。
フィードバックライトに気づかいを
ある自動車メーカーのデザインチームの方々と車のインテリアの照明についてワークショップを行ったことがありました。その時の私は、ある特定の車を想定しながら次のようなことを考えておりました。
・・・・その車はリモコンキーを押してドアを開けると、車内の照明が2.8秒のフェードタイムをもってついてまいります。そしてドアを開けドライビングシートに座った直後、今度はゆっくりと車内の照明はフェードアウトし、代わりにエンジンスタートボタンに明かりが灯ります・・・この時間軸での光のデザインを行うことによって使う人を迎え入れ、これから移動する気持ちを盛り上げることが出来るのではないかというストーリーです。
また、女性のメイクアップ用ミラー照明研究のときの話ですが、三面鏡を開くとその左右についた照明がただ点灯するのではなく、キラキラキラと煌き、点灯することによって、これからメイクをする女性の気持ちを盛り上げる演出が必要だと第一線で活躍されているメイクアップアーティストからのリクエストがあったのです。
考えてみるとフィードバックの光にも、いよいよクオリティの高い光のデザインが求められているようです。この先、室内空間には更なるIT化が進んでいきますが、IT臭さをいかに人間味に添えるようにデザインしていけるか、こういったフィードバックの光にも工夫が込められなければなりません! ただ点灯・消灯するのではなく、心のこもったメッセージが感じられる・・・、そんな小さな光のデザインが今求められています。
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