光を使って楽しくdistancing!
新しい価値観
今年は世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、私たちの生活が大きく変わることになりました。感染拡大が少し落ち着いた地域から緊急事態宣言が解除され、諸外国においては都市のロックダウンが解除されつつありますが、感染の危険が、完全に取り払われた訳ではありません。
そこで、これからの生活のことをアフターコロナとか、ウィズコロナという見方で、今までとは違うやり方でものごとを進めていかなければいけないという考え方が提唱されています。それはNew Normal(ニューノーマル=新常識)と呼ばれ、仕事や消費者行動などあらゆる事の新しいオペレーションを模索していこうというものです。 そこで私も照明デザインで出来るニューノーマルのための光のレシピを考えてみました。
ニューノーマルとは?
そもそも、この言葉は2007年から2008年にかけてのリーマンショックによる大景気後退が新たな常識を生むだろうと提唱されたものだそうです。ここに来て経済の問題だけでなくウイルスの問題も加わり、人と人との接触に関しても新しい常識をもって進めていかなければいけなくなりました。
実際、世界では多くの企業が今後もリモートワークを推し進めて行くようですが、すべての人間の活動がリモートで行われるわけではありません。そこで、ニューノーマルの所作が論じられています。照明デザイナーという立ち位置でそれらをどのように考えているのかを、少し提案してみたいと思います。
最初のスケッチは、ソーシャルディスタンスを保ったワイン会のイメージ(すみませんソムリエという名前がついているものですから・・・)、キャンドルを人と人との間に置くというシンプルな方法です。キャンドルの配置により、上昇気流が生まれ自然に見えないバリアが出来るという作戦なのですが、光のソムリエとしては、むしろ炎の煌めきでみんなの表情もキラキラとイイ感じになって和らいだ雰囲気を作るのが狙いです。
“光に包まれる”が居場所
こちらはオフィスでの案。現在、スーパーや公共のベンチなどでここに座ってはいけません!という張り紙やラベルが使われていますが、オフィスであれば天井の照明を真っ暗にして、このスケッチのようにスポットライトをソーシャルディスタンスが確保される距離でポン、ポン、ポン・・・と置くことで、光がある所が自然と人の居場所になるでしょう。
歩きながら、人と距離を保つアイデア
人口が多く、公共交通機関が発達した都市は、通りに人が溢れている・・・、それは今までは普通のことでしたが、ニューノーマルの時代においては、通りに人が少ないほうが良いでしょうし、出来るだけ密にならないことを心掛ける必要があります。そこで考えたのが、テリトリーを示してくれるライトハットです。
これは帽子からレーザーのようなものでリング状の光を出して、自分の周りの半径1~2メーターのところにエリアを示してくれるイメージです。このリングの光に何かが触れた場合は光が赤く点滅したりする変化が起きればアラートにもなります。夕方から薄暮にかけては、ニューノーマルなアートのように見えるかもしれません。
ニューノーマルなフライングソファ2.0
私が2007年に書いた著書『デリシャスライティング』の中に、フライングソファというレシピがあります。それはソファと床の間に照明を仕込むことで、ソファの下からからふんわりとした光が漏れ出し、まるで魔法の絨毯のように浮かび上がっているかのように見えるというものでした。
この効果が心地よさだけではなく、これからの時代はテリトリーを示す光としても役立つように思います。先ほどのライトハットと同様に座っているひとの周りに円形に光を広げ、人が近づくと光の形が回転したり色が変わったりすることでお知らせするという仕組みです。これならばラベルや張り紙と違って、ソファーを移動させた所でもソーシャルディスタンシングが可能です。また、その場の雰囲気を壊すこともありませんし、子供もゲーム感覚で楽しんで使えるでしょう。
今までと常識が違ってしまうことは時として人間にとってはストレスになることもあります。仕方なくやっているものでは、続けていくことは困難ですが、それよりもお洒落であるとか、面白いという感覚で空間作りをすれば良いのではないかと考えます。10年ほど前に生まれたニューノーマルという言葉は、コロナ後の時代においてはニューノーマル2.0と称されているようです。それに倣いデリシャスライティングも2.0となり、光のソムリエレシピも2.0バージョンとして生まれ変わっていくのです。
光のソムリエは、人生の時間をより深く楽しくするのがモットーなのですから・・・!