あの憧れのグランドフラッシャーが、今ここに!
憧れの自転車
私が小学生の頃、もう40~50年くらい前の話になりますが、欲しくてたまらない憧れの自転車がありました。それは「グランドフラッシャー」という名前のジュニアスポーツ車で、荷台の下部分に方向指示ランプとストップランプがついていました。また、ハンドルとサドルの間のフレーム部分に自動車のシフトレバーを模したギアチェンジがついていたり、当時のスーパーカーブームにのって販売された自転車でした。
スーパーカー自転車の仕様
グランドフラッシャーというのは商品名で、当時はいくつかのメーカーがこぞって色んなスーパーカー的要素を盛り込んだ自転車を発売していきました。今、インターネットで検索してみると、「フラッシャー付き自転車」という名前で紹介されていますが、その名の通り、一番の特徴は自動車のような仕様のライトにあります。特にテールライトは方向指示器になっていて、手元で操作すると曲がる方向に赤い光がトゥルルルルッ、トゥルルルルッ、トゥルルルルッ!と流れるのです。
当時、これがすごく憧れのアイテムで親にねだるものの、結構高価なものだったので、そう簡単には買ってもらえません。○○君は持ってる!と食い下がるも、ウチはダメ!と一喝されてしまいます。そこで仕方なく自作で自転車に豆電球ライトを付けたのですが、さすがに本物のような流れる光までは作ることが出来ず、ただピコーン、ピコーンと点滅させるのみ・・・。ですから、より一層、あの流れるような光に思いが募る一方だったのです。
現代によみがえった“あの”光
ところがです。最近、“あの”憧れの光が自動車に戻ってきているではありませんか! ここ数年で発売されている車はウインカーがまさにあのフラッシャー自転車のごとく、トゥルルルルッ、トゥルルルルッっという光の流れで方向指示をするものが色々と出てきています。実は私も昨年愛車を買い替えたのですが、その車も流れる光のウインカー!そう約50年の時を経て、やっと私の手元にやってきた感想は何とも嬉し恥ずかし・・・いや、やっぱり嬉しかったです。
この流れるウインカーはベンツやアウディ、レクサスといった海外メーカーの車などによく見られます。しかし、確か日本ではウインカーライトにこういった動きをつけてはいけないという規制があったはずだと思い調べてみると、海外メーカーのこういった動向を受け、日本でも2014年にその法規が一部改正になり流れるウインカーが解禁、最近ではトヨタ車でも流れるウインカー車が発売され始めているようです。
4次元、5次元に進化する照明デザイン
このブログで2年前に「自動車ヘッドライトの変遷」と題し、カーランプに使われる光源が白熱灯からハロゲンランプ、キセノンランプ、そしてLEDへと変わってきているという話題をお話したことがありました。
ひとつの白熱電球の玉であった「点」から、強い光によって「面」で光るようになり、LEDのような小さな素子に変わることによって「線」が登場したのです。しかし、LED化によってもたらされたのは、どうやら明るさや省エネ、見た目のオリジナリティだけではないということがわかります。
LEDにすることにより可能となった細い線形のデザインには点滅以外の動き、つまり「流れ」が加わりました。
そして、動きや流れを付けたからにはその「速さ」に気を付けなければなりません。速すぎる光の動きは、後方の車のドライバーを焦らせてしまうでしょう。また遅すぎると注意を喚起するには不十分ということになってしまいます。
そこで、絶妙な速さ感覚が求められるのです。
自動車のウィンカーの光は、点から面、そして線、さらには時間軸が加わり、照明デザインは2次元から3次元、4次元とレベルアップしていくのですが、もっと最新になると、一体どうなるのでしょうか?
さて、最後に見て頂きたいのが、この動画です。
実は流れるウインカーを初めて導入したのはドイツの自動車メーカーのアウディのようで、こちらの動画は20世紀初頭から現代までのアウディのヘッド&テールライトの変遷がまとめられています。
この動画の最後には、現在プロトタイプとして発表されているウインカーが出てきます。それは最新の光源であるOLED(有機EL)を使っていて、立体的表現を取り入れ視認性は高く、目に柔らかい光を届けるウインカーになっているのです。
こうして自動車のライトのデザインの変遷を見ていくと面白いことがわかってきました。それは、デザインが、光源技術の進化と共に発展し、今日においては、ヒューマンセントリック(=人間主体)のデザインへと歩みを向けてきているように感じられます。
このことは、自動車の照明にかかわらず建築の照明にもあてはまるものだとすれば、
私たち照明デザイナーへの期待も、より高度になってきているということです。なんだかワクワクしますね!
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