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執筆者の写真東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

おやすみライト


眠りと明かり


秋眠、暁を覚えず


10月も半ばを過ぎ、ここ東京も秋の深まりを感じるようになってまいりました。秋の始まりの季節には、夜風が気持ちいいので夜眠る時、少しだけ窓を開け、柔らかな風を感じて眠りについていたものですが、この季節になると、明け方冷えた風が寝顔をよぎって、冷え込んだ秋風を感じてしまいます。


そして、もう少しすると、さらに気温が下がってくるので、朝ベッドからなかなか出ることができなくなります。 “春眠暁を覚えず”とは、春の暖かさが心地よくて朝が来たことに気が付かず寝過ごしてしまうという故事ですが、秋もまた寒さで寝過ごしやすい季節なのかもしれません。さて、今回は、このベッドのお話、いや睡眠をテーマにブログを綴ってみたいと思います。

 

夜の眠りは朝にあり


人間が眠くなる仕組みは、身体のサーカディアン(概日)リズムによって規定されています。皆さんすでにご存じのように人間のカラダには体内時計が備わっています。そして、その時計は、一日を約25時間で刻んでいるのです。


一日の時間は、24時間なのでそのズレを毎日調整しなければなりません。体内時計は、毎日、体が朝陽を浴びることによってリセットされているのです。そして、朝陽をしっかりと浴びることによって、その14~16時間後に脳内ホルモンであるメラトニンが分泌されるといわれています。メラトニンの分泌によって、人は自然な眠りにつけるのです。たとえば、朝7時ごろに起床して朝日を浴びている人は、夜10時頃にメラトニンが分泌されて眠くなってくる・・・というわけです。


ところが、夜も明るい現代の都市生活では、この自然なリズムが狂ってしまいがちです。残業で明るいオフィスに居続けたあと、明るいコンビニに寄って、明るい電車に揺られて帰宅、その後も家の中は、新調したLEDシーリングライトで煌々と・・・だったりすると、メラトニンの分泌がうまくいかない事態となってしまいます。そして、夜ベッドに入ったものの全く眠くならないという状況に陥ってしまうのです。

 

人の生活に寄り添った照明


ところで先日、日経MJ新聞に面白い記事を発見しました。それは、アメリカで開発されたという面白いLED電球の記事でした。読書好きの娘を持つ開発者が、夜ベッドに入ってからも、灯りをつけて読書にいそしむ娘を見て、娘の睡眠が妨げられてしまうことを心配しました。そこで、開発したのが「自然な眠りにつける読書用ライト」だったのです。


特徴は37分間の時間をかけて、ゆっくりと暗くなっていくというもので、どうして37分なのか?と不思議に思ったところ、この37分というのは日没にかかる時間という説明がありました。日が沈むのに擁する時間が37分間だとは知りませんでしたが、何かとてもゆったりと昼から夜に切り替わる時間であるというイメージなのでしょう?


眠りの科学と37分間との因果関係は、少し微妙な感じがしますが、以前、私も著書「デリシャスライティング」のなかで、ベッドサイドの照明に調光器を使って時間をかけて明るさを落としていくことを提案しております。10分ごとに調光器で半分の明るさに落としていくのですが、これも実際にやってみると15分から20分で眠りについてまいります。このLED電球も私のレシピにも共通するのは、徐々に光量を少なくしてゆくことです。人に優しい光というものの一つには、ON/OFFの切り替えによる明暗の選択を超えて、連続的な明暗の存在なのではないか?そんなことを考えるきっかけとなりました。


このよう人に優しい機能を持った電球が登場したことは、光のソムリエとしてとても嬉しいことです。さて、私もひとつ購入して試してみなければ・・・そして正しいサーカディアンリズムの暮らしをしなければ、そう思う秋の午後でした。


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