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  • 執筆者の写真東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

プロジェクタースポットが面白い


「座・高円寺」のらせん階段に浮かび上がる水玉模様のライティング
「座・高円寺」photo by Toshio Kaneko

不思議な気配をつくる光


夜の屋外イベントで話題と言えば


いま、夜を彩るイベントなどでひっぱりだこの存在のひとつに、「プロジェクションマッピング」があります。これはパソコンで作ったCG映像を建築物や空間に映し出す技術で、世界中で人気となっている光の演出です。 日本では、2012年に東京駅の駅舎で行ったものが話題になったほか、大阪城やディズニーランドといった大きな施設のイベントで使われたり、最近では街でのプロジェクションマッピングをテレビCMしたものも見られたりします。


この名前、「プロジェクション・・・」からもわかるように、これはスライドプロジェクタ-と言われた幻灯機の技術から展開されているのですが、プロジェクターという機器は強い光源とレンズ制御より、スクリーン上に映像や光を拡大して映し出すもので、照明機器でもあり、映像機器ともなる中間的な存在だと思っています。私も時折スペックするプロジェクターという照明器具、今日はその不思議な魅力を紐解いてみたいと思います。

 

古き時代のプロジェクター


私が初めてプロジェクターに出会ったのは、小学校の低学年の頃でした。当時は幻灯機と呼ばれており、上の写真よりも古い形式のものでした。夏休みの夜に、学校講堂に子供たちが集まって、幻灯機によってスクリーンに出された光の紙芝居を見せられた記憶があります。これはガラス板に焼き付けられた写真や絵などの画像を一枚ずつカシャカシャと映し出していくのです。完全にアナログで絵を差し替えながらの投映なのですが、巨大なスクリーン上に光の織りなす真夏の夜の出来事にワクワクしたことを今でも記憶しています。


小学校の高学年になると、このスチルの映像に変わって動く映像を投影することとなりました。そうすると幻灯機は映写機という名前に変わり、音も加わった映画を見ることになっていきました。夏休みのエンターテイメントとしては、グレードが上がったのでしょうが、おじさんがスライドを一枚ずつカシャカシャと入れ替わるたびにワクワクした気分はあの時かぎりとなってしまいました。

 

意図を持った光


ハート型にくりぬいたプロジェクターライトの投影
ハート型にくりぬいたプロジェクターライトの投影

今度は照明の話になりますが、プロジェクターライトはレンズを使って光源を目的の方向に投げることでき、かつレンズによって軽く切り取られた光をつくることができます。さらにそのレンズと光源のあいだに遮光板を入れることで、用途がぐっと広がる面白い照明です。


この遮光はたとえば、星形にくり抜かれた遮光板を用いれば、星形の光を投映することができますし、それは三角でもハート形でも何でも光の形として投映することができるのです。最近では、この技術が自動車のヘッドライトに応用されています。レンズの後ろにある遮光版を工夫して対向車へのグレアコントロールする新しいヘッドライトとして活用されています。車が対向すると運転者には向かいのヘッドライトがまぶして視界を遮らないようにすると同時に歩行者道路のほうはしっかりと光が行くようにコントロールするわけです。


この目的を持った光を空間に応用すると空間に光でスパイスを与えるような実に面白い演出ができます。たとえば、大きな空間にポツンと置かれた花のオブジェを視角に入らない位置からプロジェクタースポットで狙えば、光はどこからやって来ているのかわからない感じで、花が自ら光っているかのように見えるのです。照明デザイナーにとって魅力的なのは、この「光がどこから来ているのかわからない」こと、実際にやってみるとこれは本当に不思議な面白さで思わず「やほー!」なんて叫びたくなるほどです。また、遮光板を大中小の大きさが異なる丸形に切り抜けば、その丸、丸、丸な光を壁や床に浮かび上がらせることができます。これを複数のプロジェクターを使って丸の数を増やしてゆくと・・・、この手法は、文化芸術センター「座・高円寺」の照明で考えた「木漏れ日」の演出となるのです(最上部画像)。


人知れず・・・、光と話をつけて・・・、人をサプライズさせる企画を練っている・・・というような、ちょっと他にはない、とっておきの照明道具ですが、この道具はしょっちゅう使ってはいけません! ここぞというときまでグッと我慢するのが上手な照明デザイナーなのです。



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