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  • 執筆者の写真東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

照明デザイナーの言語力


ライティング・フェア2013「有明あかりスタジオ」のブーズ内で話す東海林弘靖 と進行役の女性
photo by 光のソムリエ

言葉で伝える技術を磨こう!


ライティング・フェア2013にて


最近、ソムリエの田崎真也さんの著書『言葉で伝える技術』という本を読みました。ワインの世界には、その印象、香りや味わいを言葉で言い表すルールがしっかりと出来上がっているというのです。


飲んだ人々が勝手に自分の言葉だけで伝えようとしても第三者へは、なかなか伝わらないのでしょう。ワインの世界観では、人間の感覚に訴えその価値を認めてもらう必要があるので、漠然とした言語表現では無く、体系にのっとった言葉の言い回しが大切なのだという主張だったのです。そして、そのワインの業界は、この言葉による体系ができた1980年代以降世界中を席巻するほどにブームを引き起こしたということらしいのです。


そんなことをインプットされつつ今回ご紹介したいと思ったのは、去る3月に「ライティング・フェア2013」の中で開催された「有明あかりスタジオ」というブースのことです。このブースは一般の方にも照明デザインやデザイナーをより身近に感じていただけるように、55名の照明デザイナーの仕事が展示されたのですが、ブースの半分はラジオスタジオ風のつくりになっておりました。 「有明あかりスタジオ」とは、ここに照明デザイナーが登場する・・・という企画でもあったのです。


上記の写真はそこで行われたトークショー「オール・ライト・ニッポン」の様子です。そう、このトークショーは皆様の想像通り、かの長寿ラジオ番組「オール・ナイト・ニッポン」をモチーフにしたラジオ番組風トークショーです。これこそまさに、何とか言葉だけで照明の世界を伝えようと試みた大変ユニークなイベントだったのです。

 

ラジオの面白さ


「オール・ライト・ニッポン」は今までのライティング・フェアにはなかった新しい試みで、個人的にもこの企画はとても楽しめました。ラジオの場合、テレビのように映像や文字で見せて分かりやすく説明するのとは違って、ビジュアルを見せて説明というわけにいきませんから、すべて言葉で説明しなくてはなりません。そんな想像力をかきたてられるスタイルにこそ面白さがあるのです。


じつのところ、トークショーでは昔訪れた海外の光の景色の写真をモニターで表示していたのですが、“おっと!これはラジオという設定なのだから、絵を見せて「キレイでしょう!」という説明では成り立たない”となり、写真が見えない人もわかるよう言葉で光の情景を説明しました。しかし、そもそも照明デザインは言葉で伝えられなくては成り立たない仕事ですから、照明デザイナーたるもの言語技術を磨かねばならないのです。


有明あかりスタジオの内側。放送ブースと観客席
「オール・ライト・ニッポン」公開スタジオの様子。客席側には一応、上部モニターが設置されていましたが、これに頼ってはラジオになりません!

 

いつでもどこでも執拗にレポートする


言葉で的確に説明できるようになるには、見たものを常に言葉に置き換えるというトレーニングをするのが良いでしょう。たとえば、レストランに入ってグラスが運ばれてきたら、「いま運ばれてきたシャンパングラスは極めて透明度が高いクリスタルガラスでできていて十分に冷えているらしく表面がうっすらと結露しています。グラスの飲み口の直径は約5センチ、縁の厚さは約1.5ミリ、高さ12.5センチ、チューリップの花のような緩やかなふくらみのあるカップの5分の3程にシャンパンが注がれて・・・」なんて具合に、詳しくレポートしてみるのです。


メモやスケッチをとる場合でも、このような目線を持つことが大事です。スケッチには必ず解説文を書き込むことが鉄則なのです。その一文があるのとないのでは、後にスケッチを見た時にその瞬間を呼び戻す力が大きく違ってくるのです。あるいは、写真を撮った時にも言葉によるキャプションをメモしておくことをお勧めいたします。なぜ感動的な光であったのか、その光の現象はどのような物理現象であったのか・・・などなど、どうしても書く時間がないのであれば、ボイスレコーダーに声でメモをする方法もいいかもしれません。これならば、歩きながらどこでもメモをすることができます。(ブツブツ言ってヘンな人と思われてしまうのはしょうがないですが!)


仕事として光の情景をクライアントに説明するには、写真やスケッチも役立ちますが、やはり最終的には言葉の説得力が重要です。そのためにも言葉で表現し、伝えるということを日頃から訓練しておく必要があるのです。


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