top of page
  • 執筆者の写真東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

生命的熱情の光たち


ラブホ的照明?いいじゃない!


不名誉な話題?

インターネット、そしてSNSが普及したことによって、どんなことでも話題になってしまう時代なのでしょう。


先日、耳にしたのは“宮崎空港がラブホ空港と言われている”というものでした。よく読んでみると、それは空港の看板の話で、この空港は4年前に「宮崎ブーゲンビリア空港」と改称し、ブーゲンビリアの花のイメージ色(ピンク色)の看板を掲げているのですが、夜に点灯すると、それがラブホテルの看板のように見えるというのです。


実際の写真を見てみると、確かにそういった意見が上がるのも頷けます。しかし、それで広く話題になっているのなら、関係者的には成功なのかもしれませんね。また、光のソムリエ的には、このような光を、イヤらしい、下品だ、恥ずかしい!と否定的に捉えるのではなく、むしろ誇っても良い、これからの時代に結構重要な光ではないか、という視点で捉えてみたいと思います。

 

人間に必要なエネルギー


かつて、初めてパリに行った時に一番の歓楽街であるピガール地区のキャバレー、ムーラン・ルージュに連れていってもらったことがあります。有名な赤い風車のファサードをくぐると中はショーレストランなのですが、結構裸に近い踊り子さんによる非常にダイナミックなショーが展開されるのです。


そのエリアには同じようなキャバレーなどがあり、猥雑ないかがわしい印象である一方、ワクワクドキドキするような側面もあります。そもそも、いかがわしさ、いやらしさ=リビドーというものは人間の根源的な生へのモチベーションに他なりません。でなければ、人間という種は滅びてしまうわけですし、そうやって燃え上がっていくことで人間が永続していくという一つの仕組みでもあると思います。

 

生命的熱情の光を追求しよう


生命的熱情の光たちは、世界のあらゆるところで見ることができます。例えば、ニューヨークのタイムズスクエアもゴチャゴチャとした光が飛び交っていてワクワクしますし、シンガポールも暑い中でお酒を飲んでワイワイと大声を出してエネルギーを発散させる場所に賑やかなイルミネーションがあります。では、日本は?と言うと、歌舞伎町のような歓楽街はその一つと言えるでしょう。事実、海外の方には日本独特のネオンがアジア的なものとして好意的に捉えられていますし、さらにはラブホテルという独特なインテリア空間も海外にはない文化として非常に注目されています。


今まで私が手掛けてきた照明デザインの仕事で、例えば病院のような、人が弱った状態で訪れる環境における照明は、とても大切だということを伝え、いくつものプロジェクトを進めてまいりました。優しく包んでくれるような光が弱った心と身体を、少なからず癒してくれる効果があると信じているのです。


一方で、今回取り上げた生命的熱情を感じる光のデザインというのも、日本を元気にするエネルギー源としての効果が期待できると考えます。人を歓喜させる、魂に火をつけられるデザインはもっともっと研究されていくはずです。日本でのIR構想では、いよいよ生命的熱情の光のデザインを、世界に発信していく機会になるでしょう。ここで、日本の文化的文脈に載せた表現を生み出すことができれば、ひとつの照明デザインのジャンルが開けるかもしれません。


蛇足になりますが、ブーゲンビリア空港が放つピンク色のスペクトルでは、肌に赤みが差しているように見え、表情を可愛らしく見せるという利点もあることを付け加えておきましょう!

bottom of page