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  • 執筆者の写真東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

奏でるライトアップ


「MARK ISみなとみらい(マークイズみなとみらい)」の外観照明
photo by Toshio Kaneko

光の変化は音楽のように


横浜みなとみらいに誕生した新スポット


こんにちは。東海林弘靖です。今回は今年6月にオープンした大型複合商業施設「MARK ISみなとみらい(マークイズみなとみらい)」の外観照明デザインをご紹介いたしましょう。


横浜高速鉄道・みなとみらい駅直結し、横浜美術館の目の前というとても便利な立地にあり、みなとみらい21地区では最大の商業施設となります。コンセプトは“ライフエンターテインメントモール”というもので、さまざまな生活シーンにあわせたショップやレストランが多数入っているほか、階下にケヤキ並木の公園を見下ろせるガーデンテラス、果樹園や菜園を併設する屋上、30ヵ所以上のシーティングスペースとアートワーク空間など、幅広い世代がゆったりと過ごせるような空間作りが特徴となっています。


こちらの照明デザインを手がけさせていただいた中で、今回ご紹介したいのが、施設の外壁の角にあるライトアップです。一部、格子状の外壁で四角くかたどられた部分があり、夜になると格子の内側から他の外壁部分とは違う色でライトアップをするので、まるでおおきな辻行灯が灯されたように見えるのです。


この辻行灯、実はただライトアップしているのではなく、ある変化が起こるようになっているのです。

 

変化するライトアップ


青いライティングになったマークイズみなとみらい
photo by Toshio Kaneko

変化をしていくものは幾つかの要素があるのですが、その一つは光色です。一般的に、商業施設には季節感を感じることが購買意欲に直接つながると言われています。たとえば、そろそろ桜の季節だから卒業式・・・とか、秋風が吹く季節だからコートを買おう・・・となるのでしょう。春夏秋冬という四季はもちろん、加えてクリスマスやバレンタインなど、その季節やイベントを色で表現してみようと考えました。


春は桜の開花をイメージした薄いピンク色、夏は海や青い空をイメージさせるスカイブルー、秋は夕陽に映える紅葉のオレンジ、冬は華やかなシャンパンゴールド、さらに続けてクリスマスは、ポインセチアをイメージさせる赤、そしてバレンタインは白に濃いピンク色が楽しく織りなすイメージです。他にも横浜港の開港記念日あたりをイメージして少し濃い青をベースにした色を選定してみました。結果的に1年で7つの色の変化をあたえたことになったのです。


そして、もうひとつ変化する要素というのは、光の動きです。たとえば、夏のブルーは波が打ち寄せるかのごとく変化します。波が遠浅の浜辺に打ち寄せるように、青く光った部分がゆっくりと下から上へ移動し、さらにまた下からもうひとつの波が寄せるように光り、今度は波がすぅっと引いて行くように消えていく・・・といった具合です。この動きも年間7つの色に合わせたスタイルで設定されています。


そして特に工夫を凝らしたのがクリスマスとバレンタインの光の動きとなりました。これはお楽しみとして、ここでは詳しくお伝えいたしませんが、「うゎーー!いいね!」という声が聞こえてくれば大成功です。とてもロマンチックなのです。

 

“光の音楽”を奏でる


ピンク色にライティングされたマークイズみなとみらい
photo by LIGHTDESIGN INC.

こうしてゆったり変化する照明は、いろいろ試してみると、私たちの呼吸のリズムと関係があるということが分かってきました。私たちの呼吸のスピードよりも少しゆっくりとしたスピードをセットすると、見ていてとてもリラックス、安心することができるのですが、逆に呼吸のスピードよりピッチを速くすると、なんだか急かされているようで落ち着かないのです。


こういったリズムは音楽のように楽譜を描いて設計をするのですが、照明デザイン業界ではいつの頃からか“光の音楽”と呼ばれています。私が初めて意識的に光の音楽を作曲したのは、15年か20年ほど前の頃だったと思います。この手法が盛んに取り入れられるようになったのは照明を時間軸でコントロールする調光技術の発達と大いに関係があります。かつては舞台の演出用に照明調光システムが、小型化して建築空間でも比較的簡単に取り入れることができるようになったのがその普及の理由です。また2000年を過ぎたあたりからブームとなったLEDによるカラー演出と、プログラムソフトの進化もそれに拍車をかけたのでしょう。


照明技術の進化が、デザインを可能にさせた・・・いや、実はデザインのアイディアに技術が追い付いてきたということなのだと思うのです。これから、さらに光の音楽が、壮大な光の楽曲を見せてくれることを楽しみでなりません。


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