光は水の豊かさを視覚化する


雨の日にしか見えぬ光がある・・・


テンションが上がらない日


日本の6月は雨の季節。温帯モンスーン気候の特徴を満喫したいところですが、ひと月を超えて続くと思うと憂鬱な気分になってしまいます。今年は異例の6月中の梅雨明けとなりましたが、通常の6月は、そんな時期だったと思い返します。


窓の外は雨、エアコンの除湿モードを十分に働かせて、窓辺のスタンド照明をほんのりとつけ、雨の日を楽しむガーシュインの曲「Someone to watch over me」を低い音量で聞く…、そんな風流なことをしてみるのですが、それもせいぜい1時間か2時間の気まぐれとなってしまいます。


どうせなら雨の日をもっと積極的に過ごすことはできないのか?

雨の日だからこそハッピーな気持ちになるストーリーを照明で作れないだろうか?


2007年に執筆した「デリシャスライティング」では、“ドラマチックレイン”と銘打ったレシピとして窓やベランダの外に降り落ちる雨粒を照らすことで得られる水のきらめきを楽しむ方法を紹介していました。こういった憂鬱な状況こそ逆手にとって、素敵なものに変換させるというのは照明の得意とするところなのです。

 

暗い朝を晴れやかに


つい先日、どんよりとした曇り空で、事務所に向かう街角を歩いていても、目に映る景色に精彩はなく、すべてがぼやけていました。すかさずリュックに装備している照度計を取り出して計測を試みる。8500ルクス、曇天空から降り注ぐ全く影を生み出さない高照度の光をとらえた。照度の値にはだまされない!光は指向性の強弱こそが心身に影響を及ぼす…、などと妄想しながら街を歩いた。


太陽による直射量が足りなくて体内時計がなかなかリセットされないこの朝の状況を、照明で解決するという手があるはずだ!と考えてみました。曇天の街を変える訳にはいかないので、事務所に入り光の効用をいろいろ試してみました。その結果、効果的であったのは、自分の身近なところ、例えばテーブルに置かれた生け花をガーンと強く照らしてみること…、その時のあざやかな花の色とテーブルトップにできる花の影…、それを見ながらコーヒーを一杯飲んでみる。窓の外は相変わらずグレーの空ですが、気分がいい感じに上がってまいりました。


それからもう一つのアイディアは、最近気に入っている小さな輝度が集合する光のアイディアです。


これは藤本壮介さん設計のマキアートテラス石巻プロジェクトで思い切って取り入れて以来、建築照明の広がりを見せる手法として大変気に入っており、この手法を部屋に取り入れてみると、なぜかみんながワクワクした表情をみせるのは、人間の本能に作用しているのではないかとさえ感じます。


過去ブログ「気にも留めなかった存在」でも以前は全く関心がなかったと語りながらも、ここでご紹介しているこの照明手法は、梅雨時期のどんよりしている光環境にも賑やかさと煌めきをもたらしてくれるのです。コーヒーの香りと湯気と共に煌めくフィラメントの輝きを見つめることができるのは曇天や雨の日ならではの楽しみになるかもしれません。

 

光と水が景色の魅力をあぶり出す


雨の日の象の鼻パーク 青いライティングパネルが濡れた路面に反射している
Photo by Toshio Kaneko

雨は決してネガティブなものではありません。実際のところ、雨を照らすことは水の豊かさが視覚化され、そこで得られる煌めきは人を幸せにするだろうと考えています。


街の景色は雨に濡れることによって、その表情に奥行きが生まれる所があります。例えば、都会ではアスファルトの路面上には水膜ができることによって景色の映り込みが生まれ、夜になると様々な光を反射するというドラマティックな展開が起こります。


それは映画のワンシーンでもよく見られるような、今で言う“エモい”風景です。乾いた晴れの夜と比べて光が4倍、いや8倍増くらいになって、まるでたくさんの宝石箱をひっくり返したような景色はいつもと違う面白さがあるのではないでしょうか。


あの有名なアメリカンコミックを映画化した「ディック・トレーシー」をご覧いただきたいのですが、映画のセットに大量の水をまいてネオンサインのカラフルな光を映り込ませているのです。これがミステリアスで非日常手には世界観をみせてワクワクするのです。


そう考えると温帯モンスーン気候特有の梅雨期もなかなか楽しいと思えてきます。






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