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  • 執筆者の写真東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

照明デザインは会議室で決められる


光のソムリエ第135回「照明デザインは会議室で決められる」メイン画像ー会議室シーン

デザインを通すには会議を制せよ!


会議室は現代の“狩り場”


以前、耳に残る面白いフレーズを聞きました。 それは、“会議でプレゼンを通せる男はセクシーだ”というセンテンスです。太古の人間生活では、狩りをして獲物を捕ってくる男が生きる力のある者で、そういう強い男に女性たちは惹かれたと言います。


では現代社会では、生きる力をどこで見ているのか? それは、“これだと信じた志に向かって突き進み、実現していく力とエネルギーを持ち合わせている人だ”とおっしゃる方がいました。そして、会議の場で、大勢の合意を得て、実現に向けた第一歩を大きく踏み出す男こそが、現代の狩人として女性に惚れられるセクシーな男なのだとおっしゃるわけです。


なるほど、会議室が第一の狩り場というわけです。私の30年間の照明デザイン人生の中で、会議室は狩りの場だったのか・・・ちょっと振り返ってみたいと思います。

 

建築照明が出来上がるまで


建築照明というのは、最終的には現場で作られるものではありますが、大規模なプロジェクトでは、コンセプトの立案から完成までを約5年ほどかけて作られます。その中の工事が着工するまでの最初の2年間は、ほぼ会議室でプレゼンテーションの日々を過ごすこととなるのです。


事業にとってこの照明デザイン案は適切かどうか?華美すぎやしないか?ランニングコストは高すぎないか?・・・などなど、完成後も長く維持すべきものなのですから、当然厳しく会議室で繰り返しチェックされるのです。


そこを通過しないことには何も始まらない訳ですから、実は照明デザインは会議室で五割決まると言っても過言ではありません。そして、冒頭の話のごとく、会議室はまさに狩猟の場、会議でデザイン案を通すということは非常に重要で、第一の戦いの場は会議室!と言えるわけです。

 

照明デザイナーが立ち向う会議とは?


光のソムリエ第135回「照明デザインは会議室で決められる」サブ画像ー会議に挑む人々

私たちが関わる建築照明のプロジェクトにおいては、1回の会議で50人くらいの人達が登場します。


かつてこんなことがありました。それは、デザイン案の説明を終えたら、ほどなく、「ゼーンゼン、ダメだな!」とおっしゃる方がいらっしゃいました。その方は、いつも会議の流れを作っている方のようで、その発言の直後に、こんな現象が起きてまいりました。それは・・・、


「ハイっ!私もその意見に全く同感です!」 と言う人が現れたのです。そしてさらにその直後には・・・、 「私も、そう思っていました・・・ちょっと違和感があると思います!」


こうなると、もう歯止めがかかりません。その時は、ではどうしたのか?というと・・・まぁ、改めて自分の考えを“異なる言葉”で説明し直したのです。適当にまとめて創った照明などに価値はありません!自分の信念にしたがって、丁寧に言葉を尽くすことによって、良い方向に動いてくれることを信じるしかありません。

 

会議室での風景


でも、ダメだと言われているこのパターンは実は良いほうです。なぜなら指摘がハッキリしている為、何がダメなのかをとことん聞いてみると、良い掛け橋となるアイディアが沸き起こって、より良くなる方向を模索することができるじゃないですか!


しかし、うまくないパターンは、そういった発言力のある人が誰もいないようなケースです。誰も何の反応しないのは本当に困ってしまいます。 (無理もありません・・・午前10時からの会議室で夜の建物の外観照明の話をされても、ピンと来ないですよね!)


逆にうれしい反応としては、声の大きい人がプレゼン後、「俺は違和感ないな!」という、頼もしい誉め言葉を頂いたときです。ほめられすぎると、なんだか少し身が引き締まる・・・そんな感じも致しますが。


いずれにせよ、現代の狩場である会議室で、信じる道への大きな一歩を踏み出すために、周到なプレゼンテーションの準備をして臨むこと・・・、そして第2ステージへと進む時には、気を引き締めて臨むこと! 私たちはそんな現代の狩りに挑んでいるのかもしれませんね!


そう、セクシーかどうかって? それは、人によりけりじゃないですかね?


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