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光と空間はマリアージュするもの

最終更新: 2019年5月21日


光は調味料だ!

“光のソムリエ”として


ソムリエとはレストランなどで料理や、シチュエーションなどに合わせてお客様のためにワインを選定、サービスする人のことです。


「光のソムリエ」という造語は、光をワインに例えて空間と光との調和について語ってみたいという動機からだったのです。実は私は、30代後半からワインという飲み物にすっかり魅了された一人であったのですが、50歳を過ぎてから、せっかくなら本格的にワインを勉強しようと奮起してワインスクールに通いだしました。


そのクラスで先生が私に突然次のような質問をしたことがありました。それは、「東海林さん、このワインはどんな料理に合いますか?」という問いだったのです。


ワインはワインだけで飲むものではない?

ただワインが好きで、ひたすらワインだけを飲んでいた私にとっては予想もしていない質問でした。


「東海林さん、ワインは素晴らしいお酒の一つだけれど、フランスでは、ワインと料理との相乗効果を楽しむ“マリアージュ”という考え方があって、ワインの味と料理の味のお互いを高めあうような関係を楽しんでいるのですよ!」と言われ、これまで、そのような意識をしてこなかった自分が少し恥ずかしくなってしまいました。


なるほど、ただ「相性が良い」というのではなく、結婚を意味するマリアージュ(mariage)という言葉をもって表現しているのが面白いところです。そして、肉には赤ワイン、魚介には白ワインといった単純なルールを超えて、食材の風味や調理方法、調味料の種類などとワインの香りや口に含んだ時の酸味、ふくよかさ、タンニンのなめらかさ・・・などを調和させるのだそうです。


例えば、フランス・アルザス地方のリースリングというワインは根菜を使った料理と合うと言われています。それは、アルザス地方の土には石灰岩が多く含まれているので、ミネラル分の多いブドウ、ワインがつくられるからなのです。


マリアージュの掟


マリアージュの一つは、似た者同士を組み合わせるものです。


先の根菜料理とアルザスのワインは、共にミネラルつながりです。甘いスイーツに合わせるワインは、あえて甘い貴腐ワインなんていうのがフランス流なのだそうです。実際に試してみると、決して甘さが2倍になるのではなく、甘さに深みが出てくるといった感じなのです。


またマリアージュ極意の其の弐は、全く似ていない、対照的とも思えるもの同士のマリアージュです。


それは、先ほどの甘い貴腐ワインに青カビのしょっぱいチーズ(ブルーチーズ)を合わせる妙技です。こちらも実際に試してみると、お互いに魅力をより引き立て合いながら、豊かなハーモニーを奏でていくのです。


マリアージュという見方、考え方においては、 “ ワインは料理の外付けの調味料 ” だとおっしゃる高名なソムリエもいらっしゃいました。



調味料としての光


光も “ 調味料 ” という捉え方をすると、光と空間の関係はワインのマリアージュの様に、空間の魅力をより引き立て、豊かなハーモニーを奏でる、もしくは、空間の深みを生み出すものでなければならないのは当然です。


少し具体的に考えてみたいと思います。

例えば、温かく癒されるような白い部屋とマリアージュする光は、何といっても拡散光、しかも色温度を低くした光がより良いと考えられます。

一方、ダークなチーク材を使った黒っぽい内装材の空間には、グレアレスダウンライトが向いているように思います。さりげなくアクセントを与えることができるのです。



照明デザイナーは光のソムリエ

照明をワインに例えてみると、難解そうに見える建築照明デザインもすっきり、そして楽しく感じられてきます。

そして、建築照明デザインのマリアージュについて腕を競い合っているのが照明デザイナーたちということになるのでしょう。


近年、料理とワインのペアリングというコースを提供してくれるお店が増えつつあります。こんな席で、私が興奮するのは、ワイン単体でそれほど強い魅力を感じない(自分では選ばない)ものなのに、料理に合わせたときに、衝撃的な高まりあいをみせた時です。それでこそ、そのソムリエの力量を見せつけられたと感じます。マリアージュの一般的なマニュアルを越えた、深い歓びの世界を見せてくれるのです。


私も、光のソムリエとして、高次のマリアージュを生み出していきたいと、武者震いする瞬間でもあります。