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照明デザイナーの言葉、オノマトペ


光を言葉で伝える

光をポン!と・・・

皆さん、「オノマトペ」という言葉をご存知でしょうか?

これはフランス語の擬声語のことですが、日本語だとキキキーッとかドカーンといった物が発する音を文字で表現した擬音語と、ツルツルやじろじろといった物の状態や人の感情を文字で表した擬態語があります。そういえば、私は昔から、シュワーッとかババーンとかテケテケテケ、などといった擬音語が多いと指摘され続けてまいりました。また友人の照明デザイナーも、現場での作業指示になると、彼らしいオノマトペを使っているようなのです。そこで今回このブログで、照明デザイナーがよく使う光のオノマトペをリストアップしてみようと思います。

光を表現するオノマトペの例

オノマトペを使う時は恐らく無意識で言っていると思いますが、頭に浮かんだものを以下に列挙してみました。


  • ツヤツヤ―光沢を持った反射物に対して光が映り込む様。特に面的な光をスムースに映すときに表現します。光を受ける対象となる素材の状況を言っています。


  • 光をポンと置く―比較的集光された光でエッジはさほど際立っていないがまとまった光を薄暗い環境の中、床に照射する状態。設計者の心としては、碁石を置くように要となる場所に十分に考えて置く!という感じ!


光をポンと置いたイメージ。(日日 Gallery Nichinichi Photo by Toshio Kaneko)
  • フッと置く―上の「ポン」は光が集中的なところに小さくだけどポンとあるというイメージである一方、「フッと」というのはもう少し緩やかな広がりを持った光をさりげなく置く感じ。置くことにさほど意図はないといったニュアンスもあります。


  • スゥーッと光が引く―舞台照明などで人の呼吸の感覚を見計らうように光をゆっくりフェードアウトさせたり、光の変化に時間軸が出てくる場合に使います。例えば、6秒程度かけてフェードアウトすること。


  • 光をドカンと置く―人間の手を広げたくらいの領域の光を相当量の照度で照射することによってある空間の中にフォーカルゾーンを作ること。周辺環境によって異なりますが、周辺が数十ルクスであれば、500ルクス程度の照度の光を置きます。このようなコントラストの付け方は、照明デザイナーの個性によるものだと思います。


  • シャキーンと―エッジを際立たせた光(プロジェクターなどで光切り取られたような光)を照射物の状態を気にせずに配置する、光が真っすぐと美しく明暗のエッジを立てながら照射されている状態。また、白や青などの目の覚めるような色温度の高さを表すことも。


  • バッチリ当てる―対象物に対して環境の中でそれが極めてはっきりと浮かび上がるように照射して明暗をつける。

照明デザインの現場オノマトペ

照明デザイナーが使っているオノマトペは上記以外にも無数にあると思います。それは特に光を作る最終的な現場での使用が多いように思います。


最後に、現場でのオノマトペを記してみましょう。

それは例えば、「バーン」、「ドヒャー」、「バシー」なんて言う擬音表現です。文字だけだと何のことだかさっぱりわからないと思いますので、そのシーンをご説明しましょう。


インテリアの照明の現場では、フォーカシングという光の向きや光量を調節したりする作業が発生します。脚立に上って、天井からのスポットライトを触りながら調節してもらう際に、“端部を明確に際立たせるためにナントカ・・・”と言うのでは伝わりにくいのです。そこで、バシー!なんていう言葉が飛び出すのでしょう。そしてこの時の「バシー」はいつも同じ意味と為るわけではないようです。時には真正面から当てて!という意味だったりもするのです。


ワインのソムリエにおいては香りの状態を表現するのに使う言語があらかた統一されているように、これらのオノマトペは照明デザイナーが共有する言語として共有化されたら良いのではないかと言われることがあります。


確かに照明デザインを学ぶ学生にとっては、これらの表現が何を意味するのかを体系的に理解したいところでしょうが、照明の現場を知らなければ、それは全く意味をなさないことになるでしょう。オノマトペは、情景を簡略的に表すので、情景を知らなくては想像が及ばないわけです。


情景を簡略的に伝えるオノマトペをあえて嫌う文学者もいたように、聞き手にとっての未知なる光の情景を多くの言葉を尽くして伝えることは、照明デザイナーにとって必須のルートでもあります。


一方、オノマトペで情景を簡略的に伝える場面はもう少しだけ親密さを含んでいます。光を目の当たりにできる、もしくは共通の光経験のある者の意思疎通の手段として有用なものであるから、現場において、照明デザイナーと職人さんの同志意識を高めることにも一役かってくれている素晴らしい言葉だと思っています。


Shall we オノマトペ!

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