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  • 執筆者の写真東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

2014年の照明動向


LEDの成熟と新光源の登場


今年のトレンド的照明は?


まだまだ寒い日が続いておりますが、ここ銀座の街のショーウィンドウはすっかり春のイメージとなりました。ファッションの世界ではその年のトレンドがいち早く発信されますから、ショーウィンドウを眺めているだけでも今年の流行りがよくわかります。一方、照明業界は?というと、一般の方が“これが流行り!”とわかるほどの年ごとの違いはあまり目に見えてこないかもしれません。


私たちの業界はどうやら数年単位での波があるのかもしれませんが、その大きな波の気配を何となく感じることはできるかもしれません。今年は4月にドイツフランクフルトでLIGHT&BUILDINGという世界最大の照明見本市が開かれる年となっています。さあ、そこではどんな波を感じられるのでしょうか? そして、日本ではどんな波が起きようとしているのでしょうか?

 

省エネ・長寿命だけじゃないLED


照明のトレンドは?と言われて、すぐに思いつくのはやはりLEDだと思います。思い返せば、日本においては2009年がLED元年と言われる年でした。この年はそれまでくすぶっていたLED化の予兆が一気に大波と化した年でした。特にLED電球が一般の家庭にも提供される価格で紹介されたのが記憶に残っています。また、LEDを光源としたダウンライトのラインナップが充実し、同時に白熱電球を光源とした照明器具が照明メーカーのカタログから一掃されたインパクトの強い年であったのです。


それから数年が経ち、さまざまな商品が発売されました。最初の頃はただ白熱電球よりも消費電力が少なくて寿命が長いから良いといううたい文句が多く、光の色味や演色性、パワーなどに言及することを避けていたように思えました。その後、徐々に白熱電球が持つ味わいの良さを再現したLED製品やスムーズに調光できる製品が開発されていき、本格的にLEDを導入していける雰囲気になったのが2012年から2013年といったところです。


さて、では今現在はと言いますと、実は昨年発売され、照明デザイナー達にも注目されている照明器具があります。それは白熱電球のような色温度調光(2700Kから2000K)ができるLED照明です。


色温度調光とは、光の量に合わせて自動的に色温度が変わることを意味します。これまでも調光と色温度調色を可能にしたLED照明器具はあったのですが、専用のコントローラで独自に変化させる仕組みでした。また、色温度の変化幅が大きく、昼と夜での色温度の違いを演出するような使い方には向いていましたが、レストランやバーなど比較的低照度の空間でデリケートな光演出を求められる場合にはあまり役には立ちませんでした。今回登場した色温度調光LEDは、これまで白熱電球を用いていた器具にそのまま取り付けることができ、従来の白熱電球と同じように調光してゆくと、自然に色温度が下がってゆくというものなのです。

 

LEDの差別化、さらには新光源も


リカバー(闇のバー)。暗闇に照明で浮かび上がる花瓶と背面の赤いスクリーンから透けて見える照明
photo by Toshio Kaneko

これまで130年間で培われた白熱電球の文化をLEDがようやく継承できるだけの技術に至ったことは、その伝統が途切れてしまわないか?と危惧していた私としては、少しほっとした感じがいたします。


さて、新素材と言えば、今年から来年にかけてさらなる新光源として普及していくのではないかと予測されるのが、有機ELという薄さわずか1ミリの薄型パネル光源です。これは既に薄型テレビや携帯電話等に使われている素材でもあるのですが、じわりじわりと照明器具としても登場していきそうです。日本でも数社のメーカーが開発競争を激化し始めていますし、製造ラインへの投資も徐々に行われて、いよいよ有機EL照明元年の予感がいたします。


さて、今まさに東京では「LED NEXT STAGE」という総合展イベントが開催されています。展示会のタイトルが示すように、すでに照明業界は次なるトレンドに向けてかじ取りを始めているのです。そして、4月にフランクフルトで行われる見本市「Light+Building」では有機ELの製品化がどこまで進んでいるかが楽しみです。さらに、6月にはアメリカラスベガスで「LIGHTFAIR2014」が開催されます。こちらも見に行く予定がありますので、またこれらの情報をアップしてまいりたいと思っています。


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