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  • 執筆者の写真東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

“奥郊外”の暮らしを妄想する

更新日:2022年12月14日


都会に住まない生き方


1年間経って変わったこと


新型コロナウィルスの感染防止のためにリモートワークに切り替えてから1年経ち、現在はオフィスでの仕事も一部復活していますが、LIGHTDESIGNにも大きな変化がありました。一昨年までは、20時か21時まで残って仕事をしているのは当たり前でしたが、今では終業時間の19時になるや否やみんなサーっと帰ります。これは大変良い変化です。だらだらと仕事をするよりも、かなり集中力は高まっているようです。


また、様々なニュースによれば、リモートワークになったことも手伝って、都会から自然のある暮らしを求めて郊外へ移住する人も出てきていると・・・その移住先は海が見える場所だったり、森林エリアだったりするそうなのですが、そんな住まうことへの価値観の変化が起きている今、それらの人々には一体どんな心境の変化が起きているのか?そしてその結果照明への向き合い方はどう変わっているのかを考えてみました?

 

世界に広がる移住感覚


世界に目をむけると、都市部から田舎の方に移り住むという現象は実はコロナパンデミック以前から既に起きていたそうで、例えばニューヨークやロサンゼルスでは、家賃が高騰したことによって他の州に人口が流出しているそうです。また、イギリスではEU圏離脱という社会システムの変化をきっかけに他国へ移住するという動きがあったそうです。

今はインターネット回線さえあればどこでも働ける職もあるわけですから、そのような人たちはより住みやすい場所へと移動し、それがパンデミックによって加速されているという状況のようです。


ところで、東京という都市ではどうかというと、元々郊外から電車で都心へ通勤するという都市システムであったこともあって、ここで語られている都市部から郊外への移住というのは、今までの郊外よりももっと奥まった所、例えば熱海とか軽井沢、銚子、日光くらいに移住する感覚なのかもしれません。そこで、このブログでは、郊外よりもさらに先へ行った場所のことを“奥郊外”と呼んでみることとします。

 

自粛生活中に思ったこと・・・奥郊外への移住


実のところ、私も昨年の自粛生活中にやはり奥郊外への移住を考えたことがありました。家に籠ってリモートワークをするにも気が晴れないし、ならばいっそのこと人が過密でないエリアに場所を変えてしまってはどうかと思って、奥郊外への移住をシミュレートしてみました。


東京との往来が可能なくらいの距離で、自分の好きなことも充実できる場所と考えたとき、私はワインが好きなのでワイン作りが盛んな山梨の勝沼に移り住んだらどうだろうか?なんて、妄想がどんどん膨らみました。


照明デザインの仕事の傍ら、ブドウの収穫の時期にはワイナリーのお手伝いなんかをして…(どんどん妄想が膨らみました・・・)。しかし、実際に物件を調べてみると、こういった地域には好き勝手に行き来しやすいマンションのような物件はなく、アパートか戸建てになってしまうのが、その先へ具体的に駒を進められない感じとなってしまいました。 

しかし、これはあくまで妄想でありますので、そんな山梨県のブドウの里に住んで、その家・・・たぶん南斜面に立つ小さめの戸建てで朝起きるときの状況などを想像してみたりしました。その窓から入って来る太陽の光によって目覚めます。この光には450nmから500nmのスペクトルが含まれていて、毎朝しっかりと私の体内時計をリセットさせてくれます。昼間は太陽の光が充分に入り、夕暮れ時には西に沈む太陽の色味の変化やそののちに空いっぱいに広がるブルーモーメントを楽しむことができるのです。さらに満月の時には月の光が入って来る…と言った感じです。


と妄想したところで、では、夜になったら私はどんな行動をとるだろう・・・?と考えたとき、光のソムリエは火を焚くのではないかと考えました。そして、それはキャンドルのような小さな炎ではなく、焚火や薪ストーブのイメージだったのです。

 

人が火と対面するとき


薪がオレンジ色の炎で燃える様子
photo by Simon_sees

そう考えると、がぜん薪ストーブに興味が出てきました。 早速検索してみると、現在いろんな国でたくさんの種類のプロダクトが開発されていることがわかりました。国は北欧からスペイン、フランス、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど。もちろん、日本のメーカーもあります。スタイルはクラシカルなものからモダンなもの、さらにはモバイルアプリから空気量をコントロールできるスマート薪ストーブまで登場しているのです。


燃料は木ですから、定期的に薪が必要となりますが、その薪の切り方にもいろんなコツがあり、なかなか深い世界だとわかりました。照明と考えると電気とは違い、かなり手間のかかるツールです。しかし、奥郊外の空間ではこういう火の光と直面するような時間が展開しているのではないかというイメージとなりました。

 

時間の感覚、生活の尺が変わる


そもそも昨年から始まったリモートワークの普及で時間の使い方は、大分改善されたと思います。今までは、打ち合わせ場所への移動時間に1時間、会議時間が2時間(せっかく集まったのだから2時間は議論しよう・・・といった感覚?)、そして帰る時間が1時間、約4時間の枠が一つの行動にかかりました。


今はオンラインになったことで時間が一気に短縮されました。ZOOMの会議時間は長くて90分!これまでの三分の一の時間となったのです。さらに、余裕を持って移動するために分刻みの時間の管理が強いられていましたが、それからも少し解放された気がします。


奥郊外型の暮らしは、そろそろ寒くなったから薪を用意しよう・・・薪割をしよう!・・・焚きつけの木を拾ってストーブに火をつけよう・・・といった具合に案外時間がかかるけれども、ゆったりとした時間の中で展開され、生活の尺が変ってくるように思います。人生の時間を忙殺されることなく、季節ごとの陽射しや月あかりなど、自然界の大きな時間の流れとともに、ワクワクするクリエイティブな時を楽しむようになるのでしょう!


私たちの精神は、薪ストーブから放射される赤外線を皮膚で感じながら、何にもとらわれないさらに広く大きな世界になっていくかもしれません。


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