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  • 執筆者の写真東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

所変われば視点も変わる?


松山文創園区( ソンシャンウェンチュアンユェンチュ)の夜の様子。上階のファサードが赤く光っている
photo by Hiroyasu Shoji

台湾プロジェクトに見た感覚の違い


台北に誕生した新カルチャースポット


今年は5年ほどかけて取り組んできた大規模な海外プロジェクトがようやく完成いたしました。そのプロジェクトは台北市内にオープンした複合商業施設「松山文創園区( ソンシャンウェンチュアンユェンチュ)」です。敷地は1.2ヘクタールもある広大なたばこ工場だった跡地を再開発したものです。この中には新築の施設だけでなく、約75年前に建設された老建築も残っていて、かつての面影を残しつつリノベーションしているのです。これら壮大な施設群は、台北のアートやカルチャーが集う場として再生された一大文化総合施設として完成いたしました。


メインの複合施設の設計は建築家の伊東豊雄さんということもあって、この度、私もプロジェクトに参加することができました。担当した建築物は地下4階、地上14階のメインビルディングでこの中にはオフィス、商業(ショップ・レストラン)、シネコン、シアター、イベントホールなどが入っています。さらには今年中に同施設内に入るホテルの開業でフルオープンとなるのですが、8月から既にオープンしているエリアは毎日たくさんの人で賑わっているそうです。

 

雰囲気の違い

台湾の夜景
photo by Hiroyasu Shoji

実はワタクシ、台湾にはこのプロジェクトがあって初めて訪れたのですが、その時の第一印象は、気候が大分違うなぁ・・・ということでした。沖縄よりもさらに南に位置する亜熱帯気候の島ですから、東京から比べると蒸し暑く、植物も艶やかな緑色の南国ムードのある木が多いと感じました。風土気候が変われば照明に求められることにもおのずと違いがでてくるだろう・・・何となくそんなことを考えたことを思い出します。


そして、実際に仕事をスタートしてみると、徐々にその違いが感じられてきたのです。複合商業施設の運営はこちらで書店チェーンを展開する「誠品書店」という会社ですが、彼らは最近では単なる書店でなく、雑貨店やカフェなどを併設する本屋さんという業態に変化してきていると伺いました。そう聞けば、東京にもあるそのようなお店を彷彿とさせます。


照明に対して特に難しいリクエストはありませんでしたので、いわゆる日本流にデザインをはじめました。ところがやり始めてみると微妙な考え方の違いがあることに気がついてきたのです。たとえば、日本では照明においても省エネ、無駄をなくそうといった雰囲気がありますが、台北では節約ではなく、如何に有意義にエネルギーを使えるか!?という発想になっていることに気づかされます。


もう少し具体的な違いの例をあげてみましょう。日本は東日本大震災以降、商業施設の外観照明をワーッと目立たせるようなライティングを何となく嫌います。むしろあまり派手にしないでください・・・みたいな声があがってまいります。しかし、台北ではそうではないのです。リクエストは極めてシンプル、とにかく人がたくさん来てくれるように、「建物がワッと浮かび上がるようにして欲しい!」ということになります。

 

メンタリティの違い

松山文創園区( ソンシャンウェンチュアンユェンチュ)が遠巻きに見えるビルの屋上。松山文創園区の屋根が赤く光っている。
photo by Hiroyasu Shoji

最初はちょっと戸惑いました。しかし、その都市の夜の光環境や人々の光への期待に合わせてデザインを考えて行けば、自然にアウトプットされる照明デザインも異なってくる・・・そう感じられるようになったのでした。


こういった違いは建築デザインにも表れています。たとえば建物の壁部分にビビッドな色が塗られていたりするのです。日本では建築物にビビッドな色をつかうことなどほとんどありません。それがここでは自然になじんでいるのです。私も、そこに光を当て、夜間には建物全体が浮かび上がるようにしてみました。さらには、もう一つ面白いリクエストがありました。それは建物の特徴である屋根を照明で照らして欲しいというのです。


屋根を照らすというと、私の感覚では日本の郊外の国道沿いにあるファミリーレストランがよく屋根を照らしているイメージがあり、少し安易な表現にも思えました。また、この施設の屋根は黒なので黒いものを照らしてもあまりよく見えないという懸念もありました。そこで何故、屋根を照らしたいかを聞くと予想もしていなかった答えが返ってきたのです。


それは、この施設の事業者や投資している富裕層は台北の高層マンション群に住んでいて、その高層階から「ほら、あそこが新しく作った施設だよ。」とわかるようにするためだというのです。もちろん、周辺の高層ホテルからも見えるので富裕層の旅行客にもアピールできます。地上100mの景色はある程度裕福な人々のために用意される・・・このメンタリティは、国民すべて中産階級といった意識の日本では出会うことの少ないものでした。


日本の常識が必ずしも世界で通用するわけではありません。そして、その壁に突き当たり新たな考えを受け入れるとき、何か新しいデザインのヒントが見えてくるのかもしれませんね。



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